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グローイング・アカデミー、有本均学長が“人を大切にする”企業のトップと対談する企画。第3弾は、ブッフェレストラン「グランブッフェ」や「しゃぶ葉」などで知られる、NILAX株式会社(ニラックス)の崎田晴義社長との対談です。(以下敬称略)

失敗を恐れず自分で考えることが成長促す
評価は結果ではなくスピード感≠重視

有本
ニラックスの社員の方も、すかいらーくの社員の方も、グローイング・アカデミーの講義を受けていただいているんですが、同じグループ企業と言えども、社風というか、社員の雰囲気というか、大分違うように感じられるんです。グループ企業は普通、似ているものなので、ちょっと不思議に思っていました。
崎田
同じグループ会社とはいえ、育っている環境も違うし、考え方も違うんです。どちらが良いかというのではなく、それぞれの会社のシステムが違うから、社員も違ってくるんだと思います。すかいらーくはマニュアルに沿った経営を徹底したからこそ、3,000店舗を超えるチェーン店網を築くことができました。一方、ニラックスは画一的な店舗ではなく、多様な店舗展開をしています。マニュアルでは対応しきれず、自分で考えて決断しなければならないことが多いんです。
有本
なるほど。そういう企業の方向性や環境の違いが、社員気質の違いにもなっているんですね。では、臨機応変に自分で考え、決断できる社員になるためには何が必要になるのでしょうか。社員教育について崎田社長はどんなことを大切にしているのか、お聞かせください。
崎田
ニラックスの社長に着任した時から、「私はずっとこの会社にいるわけではない」と社員に言い続けているんです。私は永遠にニラックスの社長を続けるわけではありません。業績が思うように伸びなかったら退任するかもしれませんし、グループ他社への異動もあるかもしれません。私がいてもいなくても、ニラックスという会社が成長できるように、今の幹部社員だけではなく、その次の世代の社員も育てなければならないと思っています。そして、そのために必要なことは何よりも経験なんです。だから当社では社員にいろいろな仕事を経験させるようにしています。現場から始まって本社勤務になり、本社で各部門をぐるっと回ったら、そこからまた現場に戻るというジョブローテーションを組んでいるんです。
有本
それは素晴らしい教育方針だと思います。色々な仕事を経験することで、自分自身のことも色々な視点で見ることが出来るようになり、考え方に広がりができるんです。
崎田
本社勤務を経験してから現場に戻った社員は気持ちが強くなりますね。本社に異動するのは現場で成功したからとは限りません。現場で結果を出せずに本社にくることもあります。1度現場で失敗した彼らが本社勤務を経験してからまた現場に戻る時の意気込み、やる気はまったく別人のようになります。本部目線で色々なことを経験したことで、彼らなりに自信も芽生えるんでしょう。そういう強い気持ちが大切なんです。それさえあれば、例えまた失敗してもいいんです。気持ちが強ければ、困難なことにぶつかっても、前向きに、諦めずに対応できるようになります。失敗が次に生かせるんです。その積み重ねによって人は成長していくのだと思っています。

有本
崎田社長のお話をうかがっていると、社員に対する信頼というか、社員の失敗を寛容して見守ろうとする気持ちが伝わってきます。会社の成長は社員の成長なしではありえないと考えていることがよく分かりました。
崎田
私が社長として赴任した会社はニラックスで5社目になります。過去には成功経験ばかりではなく、会社の再建に失敗した経験もあります。だからこそ、失敗という経験の大切さもよく分かっているつもりです。すかいらーくが焼肉チェーン店を買収したことがありました。その会社は業績が悪化していて、テコ入れにすかいらーくから社長や経営陣を送りこんだのですが、それでも業績はよくなりません。今度は私が社長として赴任することになり、私は他の経営陣を引き連れずに1人で行くことにしました。会社の再建は、買収した会社から来た経営陣だけで行っても、意味が無いんです。例え、短期的に業績がアップしたとしても、元々いた社員たちの手でやり遂げなければ、長続きしません。
有本
業績が悪化して、大企業が買収した会社を再建すると同時に、元々いた社員を教育していくわけですか。難しい命題ですね。崎田社長はその会社でどのような再建策と社員教育に取り組んだのですか。
崎田
止まっている車を動かすためには、大きな力が必要になります。その部分は私が担当しなければならないんですが、動き始めれば、あとは自走できるんです。そして、自走するために、元々いた社員たちに必要だったのは、自分たちで考えることと、成功体験による自信なんです。私はとにかく現場から改善案を出してもらい、良いと思ったことはすぐに実際にお店で採用するようにしました。メニューに使っている材料を少し変えて、原価率を下げる工夫をしたり、ちょっとしたことを積み重ねていくようにしたんです。最初は、ただコストカットのために来た現場のことを知らない親会社のサラリーマン社長と思っていたかもしれない彼らが、徐々に私のことを信頼してくれるようになっていきました。最初はなかなか彼らから出てこなかった改善策や企画案が、1つ、2つ採用されていき結果が出てくると、どんどんと出てくるようになったんです。この時、私が気をつけたのは、その企画が失敗しても責めないことでした。何が失敗の原因だったのか分析はします。しかし誰かを吊るしあげるようなことは決してしてはいけません。これを徹底することで、やがて自分たちで色々なことを考えられる組織になっていったんです。私が社長を退任した後も、その会社は毎年業績を伸ばし続けています。
有本
ニラックスに赴任してきた当初はどうでしたか? もう最初から自分たちで考える組織だったのでしょうか。
崎田
それが最初は違いました。社員が案件を私のところに持ってくる際、まず「これはどうしましょうか」と聞いてくるんです。誰も考えず、決められない組織だったんです。そこで私が決めてしまったら、組織の成長はありません。だから「どうしましょうかと私に聞く前に、君はどう考えているか聞かせてほしい。良いと思ったから私のところに持ってきたんだろう? どこが良いのか説明してくれ」と逆に相手に聞くようにして、社員に決めるように促しました。きっと、あの社長は自分で決められないと陰口を言われていたと思います。でもそれを続けていくと、次第に彼ら自身で考えられるようになっていきました。社員に対して「今の幹部社員がいなくなる10年、20年先に誰が会社を引っ張っていかなければいけないのか。君たち自身なんだよ」とよく言うんです。社員一人ひとりがしっかりと会社の将来を見据えながら、それぞれのストーリーを思い描ける。そんな会社が、成長しないはずありません。
有本
崎田社長の社員教育は主体性を非常に大切にしているんですね。崎田社長の話をうかがっていると簡単そうですが、実際には非常に難しい、根気が必要なことだと思います。研修やセミナーといった座学では身につけられません。仕事を通じて覚えていくしかないんです。人を通してしか会社は成長しないというのをまさに実践していると感じました。
崎田
人が大切というのは、営業系の経営者がよく使う言葉ですが、それだけではダメだと思っているんです。会社の成長と人の成長とバランスが大事で、どちらか一方だけでは持続していかない。だから、人の成長が会社の成長だと私は言い続けています。人を大切にしていれば業績はどうでもいいなんてことはあり得ないし、逆もまた然りです。
有本
社員教育において、私は評価こそが最大の武器≠ナあると常々言っています。そして、その評価は結果だけを見て決定するべきではなく、普段の行動も評価しなければならないと考えています。崎田社長は社員の評価について、どのようにお考えですか。
崎田
結果に対する評価はもちろん大切ですが、私が評価において重視しているのは「スピード感」なんです。飲食店の場合、外的要因に左右されやすいため、良くない結果が出たからといって、それだけで評価を下げてしまってはいけません。大切なのは悪い結果に対して、いかに素早く対応したかどうかなんです。何か問題が起きたときに、それを放置することは怠慢であり、許しません。数字が悪くなりそうだと分かったら、すぐに対応策を考え、すぐに実行に移すこと。これを重視しています。たとえ半期の数字が悪くても、1分1秒でもできるだけ早く動けば、それだけ挽回のチャンスが生まれます。そういうところは必ず評価するようにしています。
有本
なるほど、スピード感ですか。仕事のスピードが速いというのは、それだけ仕事量も多いということにもなりますよね。
崎田
ニラックスでは標準語になっているんですが「前倒し」という言葉をよく使うんです。何か企画や提案があったとき、その期日を前倒ししたらどうなるんだと。効果が期待されることならできるだけ早く導入したほうがいいに決まっています。採用するから今度は前倒しする方法を考えてくれとなるわけです。私は業績不振に陥っている会社をいくつか再生してきました。売上を伸ばし、業績を回復する秘訣は何ですかとよく聞かれます。そんな秘訣なんてあるわけないじゃないですか。どんな会社にも効く魔法のようなマニュアルがあるなら、私のほうが教えてほしいくらいです。ただ、その会社の業績を回復するために、何をしたら良いのか、その答えを見つけ出す方法なら知っています。トライ&エラーの繰り返しです。私がやっていることは、このトライ&エラーのサイクルを短くすることで、業績回復までの期間を短縮しているだけなんです。何度失敗を繰り返しても最後に正解にたどり着けばいい。最初に言ったようにこれは社員にも徹底しています。失敗を恐れず、自分で考えて素早く行動に移していく。この積み重ねが成長につながるのだと思います。
有本
崎田社長の会社がなぜ業績が上がっていくのか、また人が育つのかが分かったような気がします。本日はありがとうございました。