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有本
大倉社長には当社の有志塾でも何度か講師をしていただいていて、話を聞いていると非常に社員やその家族を大切にしている方だということが、よく伝わってきました。会社と社員のあるべき姿、社員への接し方など、普段からどのようにお考えでしょうか。
大倉
私は一言で言うなら、“仲間”というイメージで社員と接しています。私には実際に30歳と24歳の息子がいるのですが、同じくらいの年齢の社員でも、親子ではなく、兄弟のように感じているんです。


「社員が幸せにならなければ、会社は大きくならない」というのは、創業時から常に考えてきました。同族経営を否定するわけではありません。しかし、一緒に働く“仲間”である社員に、社長になるチャンスが平等ではない会社は、どんなに社員思いで、大切にしていると言っていても、私は“嘘”だと思っています。
努力をすれば、誰もが報われ、社長になることもできるからこそ、働くモチベーションが上がり、給料も増えて幸せになる。そして会社も大きくなるのです。
有本
創業間もない頃と比べ、社員が増えて会社の規模も大きくなっています。社長自身の考えは創業時から変わらなくても、それを社員全員に浸透させるのは簡単なことではありません。自分の考えを正しく社員に伝えるために、注意していること、心がけていることはありますか。
大倉
社員1人1人に会って、直接話をするのが一番良いのですが、それができなければ、伝えられる人にだけでも、しっかりと伝えていくことが大事だと思っています。その上で、私が特に注意しているのは、普段の言動です。どの会社も理念には凄く立派なことを掲げ、その理念に基づいた行動を社員に求めています。しかし、社長がたった一言、間違った発言をしてしまうだけで、その理念がすべて空虚なものになってしまう可能性があるのです。例えば、理念では常にお客様を大切にと言っています。しかし、何かの拍子で私が「お客様」ではなく「客」と言ってしまったら、社員はどう思うでしょうか。理念では社会貢献を大切にすると謳っているのに、会社の利益だけを優先するようなことを言ってしまったら、その時点で理念は「絵に描いた餅」になってしまうのです。いつ、どんな時でも社長としての言動に注意をしています。トップが率先して常に理念を意識し、それを行動に移すことで、会社全体にも浸透していきます。会社に浸透すれば、理念通りの行動ができない、理念を理解できない人は会社には居づらくなってしまうんです。

有本
私は社員の前で愚痴や失言をつい口にしてしまうことが多くて、大倉さんの姿勢を見習わなければなりません(笑)。私は社員を大切にする企業というのは、社員を成長させられる企業だと思っています。社員教育や育成についてはどうお考えですか。
大倉
社員教育の基本、根底にあるのは、会社をいかに好きにさせることができるかだと思います。それさえできれば、仕事は自然に身について、お客様を感動させるような接客もできるようになるんです。仕事の技術は現場の直接の上長が教えればいい。私は社員に「鳥貴LOVE」の気持ちをいかに持ってもらうかを考えています。そのためにも最低限、会社は「ホワイト企業」でなければなりません。サービス残業をなくし、休日もきちんと取れるようにして、コンプライアンスを重視する。「日本一の、ホワイト企業をつくろう」というのが、採用活動で掲げているテーマです。
有本
自分の会社を本当に好きになってもらう。これは簡単そうで難しいことだと思います。
多くの経営者にとって、会社経営の悩みの原点とも言えるでしょう。
大倉
これは就活中の学生たちによく言っていることですが、会社が社員に与えられるものは2つだけだと思っています。1つは給与や待遇。そしてもう1つは、先ほど有本さんが言ったように、社員を教育することや社員が成長する場を提供することです。会社経営はまずこの2つを考えることから始めなければなりません。
有本
社員教育や社員を成長させるためには、社員をいかに評価するかが大切だと思います。
大倉さんが考える社員の評価のポイントとはどういった点でしょうか。
大倉
基本は善悪の判断がしっかりとできているかどうかだと思います。いくらスキルが高くても、そこがぼやけていると、一緒に働いていくのは大変です。パワハラやセクハラにもつながっていき、職場全体のモチベーションにも影響していきます。コンプライアンスの意識は徹底しなければなりません。当社では以前、店長が焼き鳥をつまみ食いしただけで解雇処分にしていました。上に立つ人が、少しぐらいならいいだろうとやってしまうと、必ず従業員も真似するようになるんです。だから、社員でもアルバイトでも厳しく対処していました。私が店で従業員をねぎらうために、ジュースをあげる際も、必ず自分の財布からお金を出して、別の店で買うようにしています。店の商品は絶対に使いません。それくらい、徹底しています。
有本
鳥貴族の社風を一言で言うと、どのような社風なのでしょうか。
大倉
私自身は風通しが良い会社を目指しています。社長や役員と従業員の距離感がなく、いつでもどんなことでも相談できる、そんな社風だと思っています。社員には、社内で地位が高いからといって、偉い人間になるわけではないんだとよく言っているんです。ただ、責任が大きくなっているだけで、人間としては平等であり、社長だからといって、決して偉い人間ではありません。上司が部下に対して偉そうにするのを私は許せないんです。例えば、私は社員にお茶を入れてくれとか、何かを取ってきてくれとは頼みません。部長だろうと、社長だろうと、自分のことは全部自分でするんです。飲食店経営はヒューマンビジネスですから、価格や味よりも、人が大切なんです。飲食を愛している人に頑張ってもらい、頑張ればトップにもなれる、そんな会社でありたいと思っています。
有本
お茶を自分で入れるのは当社も一緒です(笑)。 私は講座の際、最初に参加者の方に自社の良い所を挙げてもらうようにしているのですが、鳥貴族の方は「風通しが良い社風」だとよく言っています。また、役員の方が全員アルバイト出身である点も会社の良い点だとよく挙げています。頑張れば、それだけ評価してくれる会社だというのは、社員の方に十分、浸透しているようです。現場出身の方が役員など経営陣に多くいるということが、現場の社員にとって、本当に心強いことになっているのだと改めて思いました。社員教育のポイントをさきほど伺いましたが、社員の採用時には、どんなことを重視しているのでしょうか。
大倉
面接の時には、皆良いことしか言わないので、人となりは分かりづらいですよね。一緒に働くようになって、徐々にどんな人柄なのか、分かってくるようになるものだと思います。ただ、私自身、たくさんの人を見てきたからか、最近は目を見ると分かるようになってきました。目がキラキラと輝いていて、くすんでない人を採用するようにしています。素直で明るい性格であることを重視しているんです。
有本
当社の講座を受けている鳥貴族の社員の方を見ると、それはよく伝わってきます。講座では受講者同士でディスカッションをしたり、意見をまとめてもらうことをよくするのですが、鳥貴族の社員の方々は率先して手を挙げて、意見を出してくれるので助かっています。他の会社の社員からも「鳥貴族さんの社員さんは凄いですね」という声をよく聴きます。現在、急成長している鳥貴族というブランドイメージもあって、どんな会社なのか興味を持っている方も多いようです。休憩時間でも受講生たちの輪の中心には、よく鳥貴族の社員の方がいるような気がします。
大倉
社内でよく社員同士でグループセッションをよくやっているので、場慣れしているのはあるかもしれません。その場に私が顔を出しても、誰も気にせず、思ったことを言ってます。普通は社長がそばにいて、発言を聞いていたら、もう少し遠慮というか、話しづらい雰囲気になるものだと思うのですが、当社の社員は全く気にしません、もっと私に気を使えよと思うぐらい、言いにくいことも言ってます(笑)。
有本
役員など上層部の方が全員、現場を経験している方というのは、社員にとって安心できる環境なんだと思います。親会社や銀行などから現場の未経験者が、経営陣に加わることはよくあることですが、その場合、現場の社員はどこかに「現場を知らないのに」という気持ちを持つものです。経営陣が全員、現場経験者であるからこそ、発言にも説得力があり、社員の不満も少なくなるのだと思います。社員を大切にしているからこそ、社員に愛される会社になり、業績も伸びていく。当たり前のことでも、実践できる会社は多くありません。鳥貴族がこれまで着々と成長し続けてきた理由がよくわかりました。これからも当社の講座が鳥貴族社員の成長の一助になれればと思っています。本日はありがとうございました。

株式会社 鳥貴族
営業本部 営業課 シニアマネージャー
呉林 直樹 様

現在、グローイング・アカデミーに登録している社員は、東京と大阪で合わせて約300人弱います。マネージャー以上の社員は必ず、毎月1回は勤務時間内に指定講座を受けなければなりません。それ以外は社員の自主性に任せて、受けたい講座があれば、勤務時間外でいつでも受けて良いことになっています。指定講座だけでなく、プラスアルファの講座を受ける社員も数多くいて、指定講座の倍以上受けている社員も相当います。昨年の実績を見ると、268人の社員が延べ78種類で932回の講座を受けました。

指定講座にもしていますが、リーダーシップ関連の講座は人気が高いようです。店長クラスの社員はリーダーシップについて、これまで自己流で勉強したり、先輩の姿を見て学ぶだけという人が多くいました。
グローイング・アカデミーの講座を受講することで、そうしたことに加えて、体系的な理論も学べると好評です。コーチングのスキルや評価面談など、実際に部下の指導や店舗運営に役立ったという声をよく耳にします。これまでは店舗ミーティングの時間が規定時間以上かかっていたのに、効率的な会議の方法を知り、時間内に終わるようになったという感想も多いようです。

ただ決められた講座を受ける「与えられた教育」ではなく、自分が選んで受けたい講座を受けるというスタイルが、自己成長を大切にしている当社の意図と非常に合っていると思っていました。
今の自分にとって何が必要かを考え、積極的に自分から学びにいくという気持ちを持てるようになった、それがそもそも大きな成長になっているんです。

これまで社員教育は内部でずっと行ってきたので、どうしても視野が狭くなりがちでした。グローイング・アカデミーの講座を受けることは、新鮮な体験だったと思います。生徒には同じ飲食業の方だけでなく、さまざまな業種の方もいて、同じ店長という立場でも色々な考え方に触れることできるので、良い刺激になっているようです。店長やエリアマネージャークラスの社員から、そういった感想をよく聴いています。